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絵本「扉の向こう」4/6

扉の向こう_4


その声はどこからともなく聞こえてきました。


「おいで。こっちだよ」
声は続けました。
まだ幼げな、優しい口調で、眠りをうながす子守唄のような声でした。


「どこ?」


「こっちだよ。君の部屋の、ふたつ先の部屋だよ」 
声は答えました。



「そこはだめだよ」
男の子は声につられて歩き出しましたが、
自分の部屋の前までくると、ぴたりと動きを止めて言いました。


「どうして?」
 声は聞きました。


「そこは開けちゃいけないドアなんだ」
男の子は答えました。


「どうして?」
声はもう一度ささやくように聞きました。


「お母さんと約束したんだ。そのドアは開けちゃいけないって」


「そう」
声は小さな声で言いました。それは寂しげにも聞こえました。


「それなら、仕方ないね」
声は、今度はすすり泣いているようにも聞こえました。


「お誕生日おめでとう」
声はそう言って、男の子の部屋の
ふたつ先にある扉の向こうへ消えていきました。