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絵本「扉の向こう」0/6

扉の向こう_0



表紙を深く考えず、人間を描いてしまい

登場人物は動物にすればよかったと後悔してしまいました。

あと、室内の話しなので、柵みたいな規則正しい物描くのが大変でした。

部屋はドラクエ10で使われる物を参考にしています。

お話は、寂しい状態の女の人が子供が産まれる事で和らぐ気持ちや、

もう一人ぼっちになりたくないと思う不安な気持ち。

そんなとこから始まります。

グニャーン絵もエスカレートです。

絵本「扉の向こう」1/6

扉の向こう_1

それは寒い日で、家のなかで、女の人が椅子に座って
自分のお腹に向かって話しかけていました。

今朝の冷たい雨のことや、身をあたためるために作ったシチューのことや、
あと少しでできる手作りのマフラーなどの話しをしていました。


それから女の人は質問をしました。
「あなたは、生まれてきたいの?」


女の人のお腹にいる子どもは男の子でした。
男の子は、あともう少しでこの世に生まれ出るところでした。

男の子は、少し時間を置いてから、答えました。
「うん。ここから出ていきたい」


女の人は頷きました。そしてこう続けました。
「わたしはあなたを生むためにここまでお腹を大きくしたのだし、
 その責任はちゃんと持つつもりよ。
 でも、生まれてきたら、ひとつだけ約束してほしいことがあるの」

絵本「扉の向こう」2/6

扉の向こう_2

「約束ってなに?」

「わたしたちが住む家には、扉が八つあるの。

寝室や、書斎や、お風呂や、あなたのための部屋や、

洋服のクローゼットや。でもある一つだけの扉を開けてはいけないの」

「どうして?」

男の子は聞きました。

「いけないことだからよ。わたしもその扉を開けたことはないの。

わたしも母親に同じことを言われたのよ。

そして生まれて、ここまで生きてきたの」

そして女の人は大きく息を吸い込んで、吐きました。

「あなたには、その約束が守れる?」

「できるよ」男の子はすぐに言いました。

まだこの世に生まれ出ていないというのに、

まるで立派な男の子ようにはっきりと答えました。

「ほんとうに、ほんとうに約束できる?」女の人は重ねて聞きました。

「その扉を開けてしまうような子どもを、産むわけにはいかないのよ」

「大丈夫だよ。約束は守るよ」男の子はきっぱりと答えました。



絵本「扉の向こう」3/6

扉の向こう_3


年月が経ち、男の子は七才の誕生日を迎えました。

男の子は自宅にたくさんの友達を呼び、プレゼントをたくさんもらい、

お母さんの作った甘いケーキを食べ、とてもしあわせな気持でした。

そして夜になると、お母さんはちょっと疲れた様子で、

ソファで横になっていました。

男の子は、うとうとしていたお母さんを起こし、

寝室のベッドまで手を引いて連れて行ってあげました。

「ありがとう」お母さんはベッドの中に入り、男の子の頭をなでました。

「大きく、えらくなったのね」続けて言いました。

「お誕生日おめでとう」

お母さんが眠ってしまうと、家のなかは突然この世界から

色を失くしたような静けさがやってきました。

時計の針はまだ七時でした。

時計のねじはいつもお母さんが寝る前に巻くのですが、

今日はその前にお母さんが眠ってしまったので、男の子がねじを巻きました。

そのとき、男の子を呼ぶ声が聞こえてきました。

「おいで」

絵本「扉の向こう」4/6

扉の向こう_4


その声はどこからともなく聞こえてきました。


「おいで。こっちだよ」
声は続けました。
まだ幼げな、優しい口調で、眠りをうながす子守唄のような声でした。


「どこ?」


「こっちだよ。君の部屋の、ふたつ先の部屋だよ」 
声は答えました。



「そこはだめだよ」
男の子は声につられて歩き出しましたが、
自分の部屋の前までくると、ぴたりと動きを止めて言いました。


「どうして?」
 声は聞きました。


「そこは開けちゃいけないドアなんだ」
男の子は答えました。


「どうして?」
声はもう一度ささやくように聞きました。


「お母さんと約束したんだ。そのドアは開けちゃいけないって」


「そう」
声は小さな声で言いました。それは寂しげにも聞こえました。


「それなら、仕方ないね」
声は、今度はすすり泣いているようにも聞こえました。


「お誕生日おめでとう」
声はそう言って、男の子の部屋の
ふたつ先にある扉の向こうへ消えていきました。

絵本「扉の向こう」5/6

扉の向こう_5


男の子はひとりでシャワーを浴び、パジャマに着替え、

歯を磨き、自分のベッドのなかに入りました。

たくさんの誕生日プレゼントに囲まれて、最後に聞こえた

あの寂しそうな声のことを考えていました。

そしてあの扉の向こうに、自分と同じくらいの子どもがひとりぼっちでいて、

自分と話したり遊んだりしたかったのではないかと思いました。

今頃あの声の持ち主は泣いているのではないかとも考えました。

男の子はベッドから出て、そっと廊下に出ました。

そして自分の部屋からふたつ先のドアの前に立ちました。


「来てくれたんだね」
 声は言いました。



「僕は九時には寝なくちゃいけないんだ」
男の子は少し固い口調になって言いました。


「それまでなら、おしゃべりや、遊んだりできるよ」


「お母さんに気付かれないように、ね」
 声が喜びを含んだ声で言いました。


「そう」
男の子は言いました。
「お母さんに気付かれないようにね」

絵本「扉の向こう」6/6

扉の向こう_6

それはあたたかい日で、家のなかで女の人がひとり、椅子に座っていました。

昼を過ぎても時計の針が動いているために、自分の子どもが

昨日の夜に時計のねじを巻いてくれたのだとわかりました。

そして、家のなかのどこにも自分の子どもがいないために、

子どもがあの扉のなかへ入ってしまったのだと知りました。

そして、女の人はひとりぼっちになってしまいました。


おしまい